約12年半前に我が家に来たその子は、
小さな体と顔の割りに、大きくタレた耳が印象的でした。
『鳥海』と名付けられた、まだ小さなその子を、
これから冬になっていく季節に、外で飼うのは可哀相だろうと、
家の中で飼うことにしました。
タオルをひいたダンボールが、その子の寝床でした。
外でも家の中でもいつも駆け回っては、何にでも興味津々で、
とりあえず、噛んだり、引っ掻いたりと、かなりのヤンチャぶりでした。
そして、目の前で大きな音を立てて割れた風船を、
見るだけで逃げ出すほど、大の苦手となりました。
成長すると、半分秋田犬の血をひくその子は、体も大きくなり、
家の中を1階から3階まで縦横無尽に駆け回っていました。
家の中で甘やかして育てたせいか、態度もデカい子になりました。
知らない人には家の前を通るだけでもよく吠えたので、
遊びに来た友人が家の中で追い駆けられてビビッてました。
プライドが高いのか、気に喰わないことをすると
飼い主にも噛み付いてきました。
オイラの右のふくらはぎには、未だ歯の跡が残っています。
それでも、かわいい子でした。
日向ぼっこが好きで、日の差す所を見つけてはゴロンと転がってました。
何か食べてると、いつもすぐに寄ってきて、
お座りしては尻尾をふりながら目を輝かせていました。
ふざけて父と母が叩き合っていると、「ケンカはやめろ!」
と言わんばかりに吠えながら間に入っていました。
ウチの一員でした。
家族でした。
約12年半の間、我が家で一緒に暮らしたその子は、『鳥海』は、
今日、死にました。
もう、外から帰ってきても、『鳥海』が出迎えてくれることはありません。
もう、飯を食ってても、横に張り付くように寄ってくる『鳥海』はいません。
もう、『鳥海』の声を聞くことはありません。
「「おい」と呼ぶ相手がいなくなった」と言った、父の言葉が印象的でした。
「玄関入る時に名前を呼びそうになるね」と言った、母の言葉が印象的でした。
「まだ家のそこいらで犬の臭いがするよね」と言った、兄の言葉が印象的でした。
幸せだったのかな?
ウチに貰われて来て、『鳥海』は幸せだったのかな?
オイラは、『鳥海』に会えて、幸せでした。
ウチの家族はみんな、『鳥海』という家族が増えて幸せでした。
今はただ、安らかな、『鳥海』の冥福を祈るばかり。
ありがとね。
さよならね。
ありがとね。