No.011 彫り留め3大要素


※3大要素とはオイラが勝手に名付け言ってるだけっす※

彫り留めについてBBSなどで質問をいただいたり、
「彫り留め」というキーワードで検索して来られる方が結構いるようなので、

ここいらで彫り留めの基本を3大要素として3つに分け解説っす。


まず、「3大要素って何?」ってことですが、それは、

『セット』 『彫り』 『留め』 っす。

彫り留めと言うモノはほぼ全て、↑の3つの要素から成り立っているんす。
ってことで、シンプルで分かりやすいマス留めを見ながら、
それぞれのチョイテクなんかを交えて解説っす。それではいくっす!



『セット』



下穴を空け、皿もみをし、石を座らせる作業っすね。

下穴のサイズは直径がだいたい留める石の直径マイナス0.4oより
小さければいいんじゃないかと、
皿もみのサイズは留める石の直径プラス0.1o、出来ればプラス0.05oっすね。
深さはカット石の場合、ガードルがスポッとはまり、テーブルがやや出るくらい。

このセットは作業は単純なんすけど、とても重要で意外と難しいんす。

例えば、下穴の位置がズレると石の位置もズレて、最悪の場合
石を留められない事もあるし、皿もみが下手だと、いざ留める時に
石が動きまくってナナメに留まっっちゃったって事もあるっす。
また皿が浅いと留まらなかったり、深いとヘコんだように見えてしまうっす。

それらが0.1oの誤差で起るので、実はかなりの精度を要する作業なんすねぇ。

そこで、チョイテクっす。

下穴の場合は、理想がΦ1.2oだったら、最初Φ0.8ミリの穴を空け、
もしズレたら、リューターポイントのカッターで穴の中心をズラすんす。
穴は広がるけど、その分の余裕があるので大丈夫っす。

皿もみは、ドリルでもんだ後に、カット石ならストーンセッティングって形の、
それ以外はだいたいラウンドのリューターポイントのカッターで
軽くナメてやると落ち着きが良く、深さも分かりやすくてイイっす。

あと、皿もみをするとバリが出ると思うんすけど、それは
キサゲやペーパーヤスリをかけて取っておいた方が後の『彫り』『留め』が
上手く&キレイにいくっす。



『彫り』



そのまんま「彫る」っす。ここが彫り留めの見せ所っすね。
留め方次第でそれぞれ彫り方が違うんすけど、↑の画像はマス留めのっす。
上手く彫ることで見栄えが変わるのはもちろんの事、
後の『留め』がやりやすくなるっす。

この『彫り』は練習してくださいとしか言いようがないんすけど、
ポイントとしては、基本的に爪になる部分を同じ大きさ・幅にしましょう。
それだけでも見栄えと留めやすさが変わるっす。

頭の中で画像右のように彫った後のイメージが出来ないうちは
画像左のようなラインを実際に書いたほうがイイっす。

あと、当たり前な事っすけど、ひと彫りひと彫り一発で決めた方がキレイっす。
↑のマス彫りも何回もタガネを入れ無理に四角にするより
少々四角がゆがんでも一発で彫った方がキレイだったりするっす。

ちなみにマス留めの彫り方は、爪になる三角部分を毛彫りで作り、
片切りでマス型に面を彫るっす。



『留め』


(地金がシルバーから真鍮に変わったのは気にしない)

爪を彫り起こし、石を止める作業っす。
これは最悪石を割る可能性があるので一番神経を使うとこっすね。

『留め』が上手いと、それこそパヴェなんかはすごく栄えるっす。
逆に下手だと品物そのものがオシャカになることもしばしばっす。

実際に留めるのは『彫り』と同じく経験によるカンが頼りなんすけど、
チョイテクを言うと、まず、石をセットする時に、軟膏を塗る
爪楊枝なんかにちょっと付けて座に塗っておくと、爪を起こす時に
石が跳ねたり動くのを大分抑えられまっす。オイラはアロエ軟膏を
使ってるんすけど、他にもグリス、コーヒー、唾などなど
職人さんによって塗るモノは色々のようっす、とりあえず肌に優しいモノ、
万が一口に入っても平気なモノを選ぶとイイと思いまっす。

で、爪を起こす時は一気に寄せないで、4点なら4点、少しずつ寄せる
ナナメに留まったりせずに済むっす。あと、ナナコで丸める前に
しっかり留める事。ナナコで留めようとしてグリグリやり過ぎると
ナナコ傷やバリが出て仕上がりが汚くなるっす。
ナナコは優しく丁寧に丸めるだけで! んで、そのナナコっすけど、
市販で買ってきたモノは窪みが円錐状になっているので、一度なまして
ポンチで叩くか、リューターに付けるセラミック研削棒で
球状1/3くらいの形にした方がイイっす。

ちなみに、マス留め時のポイントは、しっかりマスの角を作ること。
最終的に↑のマス留めで使ったタガネは山の角度100度くらいの毛彫りと
直線の片切りの2本とナナコだけでした。



以上、彫り留めの3大要素を解説、そしてほぼどんな彫り留めにも
通用するチョイテクを紹介したワケっすけど、
この彫り留めってのは石を割る可能性があるだけに、
またせっかく作ったモノをダメにする恐れがあるだけに、
最初は緊張感が半端ないと思うっすけど、そこは経験を積んでくださいっす。
ある意味、割ってナンボ壊してナンボっす(笑)


最後におまけとして、マス留めにミル打ちをして少し装飾したモノっす。




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(2005/12/11)

poko